獣医師コラム
猫を飼ったら何をする?生後1年目のあれこれ
この記事を見ている方はおそらく、小さな仔猫を両手に抱えこれから先の生活にワクワクと少しの不安の抱きながら読まれていることでしょう。
今回はそんな方々に知ってもらいたい、ネコちゃんの情報をお届けします。
猫にとっての生後1年間はとても大事な時期です。
人での高校生~成人までの成長を1年間で終えてしまいます。
そんな大事な時期だからこそやるべきことが盛りだくさん。
目次
1. 混合ワクチン
2カ月齢、3カ月齢の計2回
以降は年1回の混合ワクチン接種が推奨されています。
混合ワクチンの中にはコアワクチンとノンコアワクチンがあり何を接種するかは主治医とじっくり相談してその子にあったものを選択しましょう。
混合ワクチンの必要性
ワクチンを打つことで抗体価(免疫力)が上がり、実際これらのウイルスや細菌に感染したときにペットを感染症から守るだけでなく、ペットから人への感染を予防することにもつながります。
特に生まれたばかりの仔猫は母子抗体というお母さんからもらった免疫機構によって外部の病原体から身を守っていますが、これは生後数カ月で徐々になくなっていきます。(消失時期には個体差あり)
初年度に複数回ワクチンを接種することで十分な免疫力を獲得し、母子抗体がなくなったときの感染リスクを減らしてくれるのがワクチンです。
混合ワクチンってホントに必要なの?とよく聞かれることがありますが、答えは多くの場合イエスです。
ワクチン接種によって予防できる病気には若齢期、老齢期に重篤化しやすいものも多く、しっかりと免疫を獲得することが健やかに成長する秘訣でもあります。
しかし、免疫力の極端に低下している子やアレルギー反応が出やすい体質の子に対して無理に許容することはありません。
ご不安があればご相談ください。
猫の混合ワクチン
当院では3種と4種を使用しています。
3種
猫汎白血球減少症、猫ウイルス性鼻気管炎、猫カリシウイルス感染症を予防するコアワクチン。
これらの感染症は感染動物の鼻汁、目やに、唾液からの直接感染や飛沫感染など感染能力が高いことが知られており、室内で飼育している愛猫への接種も推奨されています。
4種
上記3種に加え、ノンコアワクチンである猫白血病ウイルス感染症を予防します。
猫白血病ウイルスは外猫の所有率が高いため、外出を頻繁にする子や、同居に感染猫がいる場合に推奨されます。
ワクチン関連有害事象
愛猫のために行うワクチン接種ですが時に副作用の発生が報告されています。
・嘔吐
・下痢
・食欲不振
・発熱
・顔がはれる
このような症状がでた場合はすぐに主治医に相談してください。
特に注意が必要なものとして「アナフィラキシーショック」と呼ばれる急性アレルギー反応が挙げられます。
これは、ワクチンへの過剰な免疫反応により接種後30分以内に、呼吸困難、心肺停止、痙攣、低血圧など命に係わる事象が発生するため早急な対応が必要です。
発生率は10万頭に1頭と極めて低いものの、この記事を読んでくれている読者の方には是非知ってもらいたい反応です。
これら副作用を軽減、回避するため、当院では1頭1頭必要なワクチンを見極め、より安全なワクチン接種ができるよう心がけています。
2. 外部寄生虫(ノミ・マダニ)予防
ノミに刺されたことはありますか?
マダニに咬まれたことはありますか?
長い間痒みが持続し、時に痛みを覚えます。
「そんな思いを自分のペットにさせたくない」
そうお考えの方はぜひ予防薬の投与をしてあげてください。
ノミは環境温度が13℃以上になると繁殖し、虫体の小ささから発見が遅れることが多いです。
気付いたときには大量に寄生されており駆除に時間がかかることも少なくありません。
強い痒みを引き起こし時にアレルギー反応も起こります。
マダニは森林、草木に多く生息しており小豆大になるまで吸血します。
大量寄生されると吸血による貧血を引き起こすこともあります。
また、瓜実条虫、バベシア、リケッチア、SFTSなどはノミ、マダニによって媒介されることが知られており、ペットだけでなくオーナー様の健康を害する恐れもあります。
チュアブルタイプやスポットタイプなど様々な方法で予防することができるので、その子にあった方法で予防することができます。
3. フィラリア予防
フィラリアは蚊から感染する寄生虫です。
まだ小さい幼虫に対しては駆虫薬が有効なため、蚊が出始めた次の月~蚊が出終わった次の月までの毎月の駆虫が推奨されています。
蚊の発生時期は地域により異なりますが、当院のある福岡県では5月~11月の駆虫を推奨しています。
4. 不妊手術
雌雄関わらず、当院では約6カ月齢での不妊手術を推奨しています。
そこで当記事では不妊手術におけるそれぞれのメリット、デメリットをご紹介します。
メリット
・望まれない繁殖の抑制
・性ホルモン由来の行動の抑制
♂:攻撃行動、マーキングなど
♀:発情期のマーキングや鳴き声、不安行動など
・性ホルモン由来の疾患予防
♂:前立腺肥大、肛門周囲腺腫、会陰ヘルニア、精巣腫瘍など
※特に潜在精巣は将来腫瘍化するリスクが高いことが知られています
♀:乳腺腫瘍、子宮蓄膿症、卵巣子宮腫瘍など
デメリット
・全身麻酔、手術に伴うリスク
→当院ではより安全な全身麻酔を行うため、事前に行う麻酔前検査を推奨しています。
・術後の肥満
・術後の尿失禁(♀)
詳しいスケジュールやお値段は診察室でお尋ねください。
5. 日常ケア
日頃から行うケアとして爪切り、肛門腺絞り、シャンプーなどが挙げられます。
ご自宅で行うこともできますが、やり方がわからない、血が出そうで心配、などご不安があれば診察室やトリミングでも行うことができますのでお気軽にお申し付けください。
また猫は特に飼育環境のストレスによって猫風邪(猫ウイルス性鼻気管炎)や膀胱炎といった疾患を発症しやすいことが知られています。
ここでは猫の疾患に関連した飼育環境について述べていきます。
トイレ
飼育頭数+1個の設置が推奨されています。
猫はトイレにとても敏感な動物です。
常にきれいな状態を維持し、いつでも愛猫が快適に排泄できるようにしましょう。
トイレを快適にできないと、膀胱炎や便秘のリスクが上がります。
砂の形状やトイレの形も好みがあるため最初はいろんなタイプを試してみるのもありかもしれません。
水飲み場
猫の水分不足は尿路結石や慢性腎不全などのリスクを上げてしまいます。
トイレとは別の個所になるべく多くの水飲み場があるのが理想です。
愛猫がよく通るルート上に水飲み場があると飲みに行くのも楽ちんです。
水飲みの容器は一般的に金属臭のするアルミ製よりも陶器の様な無臭のものを好むことが多く、ひげの当たらない平らなお皿を好む傾向にあります。
ミネラルウォーターは結石を作りやすくしてしまうため推奨されません。
このように環境一つとっても疾患の可能性が隠れていることがあります。
お困りの際は診察時に詳しくご相談ください。
6. しつけ
ペットショップから飼い始める年齢(約2カ月齢)は猫にとって「社会化期」といって世の中のことを学ぶための最も重要な期間です。
この社会化期は体の成長と共に大人の動物になるための準備期間であり、ここで覚えたことはいい意味でも悪い意味でも習慣化されてしまいます。
そして他の動物との接し方やオーナーを含めた人間との接し方の根本が形成されます。
7. 値段
記載されている値段は目安です。
詳しくはご来院の際にお声がけください。
混合ワクチン | |
---|---|
3種 | 7,150円~ |
4種 | 8,250円~ |
不妊手術 | |
術前検査 | 16,500円~ |
去勢 | 16,500円~ |
避妊 | 30,250円~ |
予防 | |
ノミマダニ | 1,078円~ |
フィラリア | 2,200円~ フィラリアだけでなくノミやダニの 予防もできる薬です。 |
日常ケア | |
爪切り | 1,056円~ |
肛門腺絞り | 1,056円 |
シャンプー | 7,150円~ |
混合ワクチン | |
---|---|
3種 | 7,150円~ |
4種 | 8,250円~ |
不妊手術 | |
術前検査 | 16,500円~ |
去勢 | 16,500円~ |
避妊 | 30,250円~ |
予防 | |
ノミマダニ | 1,078円~ |
フィラリア | 2,200円~ フィラリアだけでなくノミやダニの予防もできる薬です。 |
日常ケア | |
爪切り | 1,056円~ |
肛門腺絞り | 1,056円 |
シャンプー | 7,150円~ |
※価格は全て税込みです。