獣医師コラム
犬を飼ったら何をする?生後1年目のあれこれ
この記事を見ている方はおそらく、小さな仔犬を両手に抱えこれから先の生活にワクワクと少しの不安の抱きながら読まれていることでしょう。
今回はそんな方々に知ってもらいたい、ワンちゃんの情報をお届けします。
犬にとっての生後1年間はとても大事な時期です。
人での高校生~成人までの成長を1年間で終えてしまいます。
そんな大事な時期だからこそやるべきことが盛りだくさん。
目次
1. 混合ワクチン
2カ月齢、3カ月齢、4カ月齢の計3回
以降は年1回の混合ワクチン接種が推奨されています。
混合ワクチンの中にはコアワクチンとノンコアワクチンがあり何を接種するかは主治医とじっくり相談してその子にあったものを選択しましょう。
混合ワクチンの必要性
ワクチンを打つことで抗体価(免疫力)が上がり、実際これらのウイルスや細菌に感染したときにペットを感染症から守るだけでなく、ペットから人への感染を予防することにもつながります。
特に生まれたばかりの仔犬は母子抗体というお母さんからもらった免疫機構によって外部の病原体から身を守っていますが、これは生後数カ月で徐々になくなっていきます。(消失時期には個体差あり)
初年度に複数回ワクチンを接種することで十分な免疫力を獲得し、母子抗体がなくなったときの感染リスクを減らしてくれるのがワクチンです。
混合ワクチンってホントに必要なの?とよく聞かれることがありますが、答えは多くの場合イエスです。
ワクチン接種によって予防できる病気には若齢期、老齢期に重篤化しやすいものも多く、しっかりと免疫を獲得することが健やかに成長する秘訣でもあります。
しかし、免疫力の極端に低下している子やアレルギー反応が出やすい体質の子に対して無理に許容することはありません。
ご不安があればご相談ください。
犬の混合ワクチン
当院では6種、10種、4種のワクチンを使用しています。
6種
コアワクチン(ジステンパー、アデノ、パルボ)とノンコアワクチン(パラインフルエンザ、コロナ)を含むワクチン。
他犬との接触や散歩の頻度が極端に低い(病原体との接触頻度の低い)子、免疫力低下、アレルギー反応が見られる子に対して推奨されています。
10種
6種に加え、レプトスピラ(4種)の感染を予防できるワクチン。
散歩やほかの動物(野生動物含む)との接触が頻繁に起こる子に推奨されます。
特に川やキャンプに出掛けることの多い子はより接種するよう心がけましょう。
4種(レプトスピラ)
これまで6種しか打ってなかったけど、追加での接種を希望された場合に使用します。
レプトスピラ症って?
発熱、黄疸、血色素尿、流産などを主徴とする人獣共通感染症であり、西日本での発生が多く、農林水産省によって届出伝染病に指定されている感染症です。
感染動物との直接接触や、菌を含む環境水・土壌を介した間接接触による感染があり、経口、経皮的に感染が成立します。
特に齧歯類(ネズミなど)が長期にわたり尿中から排菌しており、洪水、土砂災害、地震などの災害時に感染が拡大することが知られています。現時点で確認されている血清型は230以上あり、本国ではそのうちcopenhageni,australis,autumnalis,hebdomadisの4血清型のワクチンが製造されています。
ワクチン関連有害事象
愛犬のために行うワクチン接種ですが時に副作用の発生が報告されています。
・嘔吐
・下痢
・食欲不振
・発熱
・顔がはれる
このような症状がでた場合はすぐに主治医に相談してください。
特に注意が必要なものとして「アナフィラキシーショック」と呼ばれる急性アレルギー反応が挙げられます。
これは、ワクチンへの過剰な免疫反応により接種後30分以内に、呼吸困難、心肺停止、痙攣、低血圧など命に係わる事象が発生するため早急な対応が必要です。
発生率は10万頭に1頭と極めて低いものの、この記事を読んでくれている読者の方には是非知ってもらいたい反応です。
これら副作用を軽減、回避するため、当院では1頭1頭必要なワクチンを見極め、より安全なワクチン接種ができるよう心がけています。
2. 狂犬病
狂犬病予防法により、生後91日以上のすべての犬への年1回の接種が義務付けられています。
初年度は混合ワクチンプログラム終了後に接種し、以降毎年4~6月での接種が推奨されています。
狂犬病ってどんな病気?
発症した動物はほぼ100%死に至るとても危険な病気です。
日本は世界でもまれな狂犬病清浄国として知られていますが、これを維持するためにはオーナー様ひとりひとりの感染拡大防止に対する意識がとても重要です。
日本は常に港や空港からの狂犬病侵入の脅威にさらされています。
国内で発生した際の効果的な手段はワクチンの接種。
あまりなじみのない病気で、つい忘れがちなワクチン接種ですが、裏にはこんな事実が隠されています。
皆さん年1回の狂犬病ワクチン接種はお忘れなく。
3. 外部寄生虫(ノミ・マダニ)予防
ノミに刺されたことはありますか?
マダニに咬まれたことはありますか?
長い間痒みが持続し、時に痛みを覚えます。
「そんな思いを自分のペットにさせたくない」
そうお考えの方はぜひ予防薬の投与をしてあげてください。
ノミは環境温度が13℃以上になると繁殖し、虫体の小ささから発見が遅れることが多いです。
気付いたときには大量に寄生されており駆除に時間がかかることも少なくありません。
強い痒みを引き起こし時にアレルギー反応も起こります。
マダニは森林、草木に多く生息しており小豆大になるまで吸血します。
大量寄生されると吸血による貧血を引き起こすこともあります。
また、瓜実条虫、バベシア、リケッチア、SFTSなどはノミ、マダニによって媒介されることが知られており、ペットだけでなくオーナー様の健康を害する恐れもあります。
チュアブルタイプやスポットタイプなど様々な方法で予防することができるので、その子にあった方法で予防することができます。
4. フィラリア予防
フィラリアは蚊から感染する寄生虫です。
蚊に吸血される際に一緒に動物の体内に侵入し、半年ほどかけて成虫まで成長するとともに心臓へ寄生します。
まだ小さい幼虫に対しては駆虫薬が有効なため、蚊が出始めた次の月~蚊が出終わった次の月までの毎月の駆虫が推奨されています。
蚊の発生時期は地域により異なりますが、当院のある福岡県では5月~11月の駆虫を推奨しています。
チュアブルタイプ、スポットタイプ、注射タイプなど様々な方法で駆虫することができるので病院でその子にあった方法を選択しましょう。
5. 不妊手術
雌雄関わらず、当院では約6カ月齢での不妊手術を推奨しています。
そこで当記事では不妊手術におけるそれぞれのメリット、デメリットをご紹介します。
メリット
・望まれない繁殖の抑制
・性ホルモン由来の行動の抑制
♂:攻撃行動、マーキングなど
♀:発情期のマーキングや鳴き声、不安行動など
・性ホルモン由来の疾患予防
♂:前立腺肥大、肛門周囲腺腫、会陰ヘルニア、精巣腫瘍など
※特に潜在精巣は将来腫瘍化するリスクが高いことが知られています
♀:乳腺腫瘍、子宮蓄膿症、卵巣子宮腫瘍など
デメリット
・全身麻酔、手術に伴うリスク
→当院ではより安全な全身麻酔を行うため、事前に行う麻酔前検査を推奨しています。
・術後の肥満
・術後の尿失禁(♀)
詳しいスケジュールやお値段は診察室でお尋ねください。
6. 日常ケア
日頃から行うケアとして爪切り、肛門腺絞り、シャンプーなどが挙げられます。
ご自宅で行うこともできますが、やり方がわからない、血が出そうで心配、などご不安があれば診察室やトリミングでも行うことができますのでお気軽にお申し付けください。
7. しつけ
ペットショップから飼い始める年齢(約2カ月齢)は犬にとって「社会化期」といって世の中のことを学ぶための最も重要な期間です。
この社会化期は体の成長と共に大人の動物になるための準備期間であり、ここで覚えたことはいい意味でも悪い意味でも習慣化されてしまいます。
そして他の動物との接し方やオーナーを含めた人間との接し方の根本が形成されます。
当院ではこういった大事な時期のしつけを専門とする、いわゆる「ワンちゃんの幼稚園」の先生と連携することでより楽しくペットと暮らしてもらう援助を行っています。
仔犬を飼ったはいいけどいたずらがひどい…
噛み癖がひどくて手が傷だらけ…
トイレをなかなか覚えてくれない…
他の人を見ると吠えてしまう…
動物を飼っていればいろんな悩みも出てくると思います。
いきなり幼稚園に通わせるのは気が引けるのであれば、まずは小さなことからでも大丈夫ですので主治医にご相談ください。
8. 値段
記載されている値段は目安です。
詳しくはご来院の際にお声がけください。
混合ワクチン | |
---|---|
6種 | 8,470円~ |
10種 | 10,450円~ |
4種 | 4,730円~ |
狂犬病ワクチン | |
年1回 | 2,500円 別途役所に支払う料金(初回3,550円~/ 2回目以降550円~)が必要になります。 |
不妊手術 | |
術前検査 | 16,500円~ |
去勢 | 23,100円~ |
避妊 | 34,650円~ |
予防 | |
ノミマダニ | 1,078円~ |
フィラリア | 1,100円~ |
日常ケア | |
爪切り | 1,056円~ |
肛門腺絞り | 1,056円 |
シャンプー | 3,630円~ |
パピー教室 | |
1回あたり | 1,100円 |
混合ワクチン | |
---|---|
6種 | 8,470円~ |
10種 | 10,450円~ |
4種 | 4,730円~ |
狂犬病ワクチン | |
年1回 | 2,750円 別途役所に支払う料金(初回3,550円~/ 2回目以降550円~)が必要になります。 |
不妊手術 | |
術前検査 | 16,500円~ |
去勢 | 23,100円~ |
避妊 | 34,650円~ |
予防 | |
ノミマダニ | 1,078円~ |
フィラリア | 1,100円~ |
日常ケア | |
爪切り | 1,056円~ |
肛門腺絞り | 1,056円 |
シャンプー | 3,630円~ |
パピー教室 | |
1回あたり | 1,100円 |
※価格は全て税込みです。